オンデマンド版
 書学捷要  
  

  原著 朱 閑雲   解義 田邊萬平     定価 (本体2,600円+税)
   A5判 184頁                   ISBN 978-4-8195-0264-1



  清の書家朱閑雲の論書です。「書に六要あり」と説くこの書論は、書学者
  必読の書です。論法は具体的かつ実証的で、技法の分析も精巧をきわ
  めており、とくに執筆論は、読者に明快な自覚を促す力を持っています。   

     


   序章
      朱閑雲の書学捷要は、知不足齋叢書の中に収められてをり、もと二巻となつてゐた。
      一は古人の論書中、彼の意を得たるものを採録し、一は閑雲自身の論著である。本
      書はその後者である。論中或は奇異に感ずる個所が無いでもないが、すべて彼の體
      験と學殖から發するものであり、學書者必讀の名著たるを失はない。市河米庵は王
      虚舟の論書ヨウ語と梁山舟の書論と本書とを合はせて『三家書論』なる小冊子を出版し
      てゐる。
      本書は短篇の集成である。配列に一つの系統を立ててゐる點、論書ヨウ語に似てゐる
      が、各章に題目がないので拾い讀みをするに不都合である。私が敢て題目を作つたの
      は索引の便にするためである。
      王虚舟の論法には禪語的妙味があり、何遍讀みかへしてみても理解できなかつたことを、
      何かの機會に不圖悟得することがある。それに對して朱閑雲の論法には一歩一歩讀者
      を誘導してゆく筆力がある。前者は自得の根底を狙ひ、後者は技法の分析を主としてゐ
      る。
      首章の「撥鐙法」は執筆論の解明である。これについては段玉裁の著『述筆法』と比較し、
      更に楊守敬と日下部鳴Iとの筆談を参照する要がある。これも別巻で講義する豫定にな
      つてゐる。
      古書論は學書法を含んでゐるものが多い。今日の學問の形態から視るとやや通俗な感
      を受けるかもしれないが、それが古藝術論の一般であり、そのために書論の格を下げる
      ものではない。

        昭和44年7月10日  武州多摩丘陵歸雲樓上に於いて田邊萬平識す

      

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